あまちゃんから学ぶ”新しい価値の創造”
新しい価値の創造
ドラマの舞台となった袖ヶ浜のロケ地である小袖海岸には23倍の観光客が訪れた。
(引用元:http://www.iwate-np.co.jp/cgi-bin/topnews.cgi?20130909_4)
縁起のいい数字に目がとまり、秋祭りがあることに背中を押され、NHK朝の連続小説『あまちゃん』の舞台の北三陸にふらっと訪れてみた。
そこで見た景色は、あまちゃんランドといっても過言でなかった。
ゴーストタウンがディズニーランドになった。
ロケの行われた久慈市で出会った地元の人の言葉だ。
あまちゃんの魔法は、ただの灯台をシンデレラ城に変えた。新しい価値を創造するとはこういうことだ。その灯台はドラマを象徴する場面の一つでオープニングで登場する。キョンキョン扮する春子の思い出の場所であり、主人公の海女のアキちゃんこと能年玲奈がここから海へ飛び込んだ。あまちゃんファンにとってここは特別な場所であり、みんなそこで記念撮影を撮る。
小池徹平の演じるストーブさんことヒロシが働いていた監視小屋は実在する。あまちゃんがなければ登っていなかっただろうその場所へ、どれだけの人が訪れたのだろう。
監視小屋には実際に働いているおじさんがいて、ここに小池徹平が座ったとか、これがあの双眼鏡だとか聞かせてくれた。このおじさんも含め、何人かエキストラで出演した地元の人に出会ったが、彼らが話す時のその嬉しそうな顔を見るとこっちまで幸せになる。新しい価値の創造の連鎖反応を起こす、Share the Happinessだ。
どこにでもある風景が、夏ばっぱや海女クラブの面々が「いつでも夢を」を歌いながら降りてくるあの坂道と知った瞬間、そこは新しい価値を生み出し、特別な場所に変わる。ドラマの風景と実際の風景を見比べて、この小屋が海女クラブが漁業組合に変わることに気付くと、ここを選んだ監督のセンスと大道具さんの仕事っぷりにも感動する。
北の海女さんのモデルとなった北限の海女さんは、”おばさん”を”アイドル”に変えた。アキちゃんのモデルにもなった美しすぎる海女さん効果に拍車をかけ、それまでいなかった高校生が憧れる職業に変わった。ディズニーが掃除係を人気職種のカストーディアルに変えた話にも通じないだろうか。
看護師から転職したという方にガイドをしてもらったが、彼女もまたあまちゃんで彼女の人生は変わったと話してくれた。
せっかくなのでもう少し海女さんについて紹介しよう。海女さんはディズニー・ショーのように、素潜り漁の実演を見せてくれる。観光客が喜ばすために、ウエットスーツを着用せず劇中の絣斑点のユニフォームで寒い海に潜ってくれる。ミッキーやミニーのコスプレをするように、海女さんの絣斑点のコスプレをするものもいる。
そして、海女さんが目の前でウニを割って食べさせてくれる。このアイデアというかコンセプトの食体験は、ディズニーのレストランを超える。ただでさえ貴重なウニに加え、こんな遠くまで来たこと、海女さんが苦労して採ってくれたことやドラマを回想しながら食べると、付加価値が加わり23倍おいしくいただける。
ドラマ挿入可の『潮騒のメロディー』は、小泉今日子が歌い20年ぶりの大ヒット曲となった。オープニング曲やその他の挿入歌や関連曲も含め、あまちゃんのアルバムが何枚も発売されている。ミッキーマウスマーチや星に願いのように、北三陸のいたるところで流れ口ずさまれるこれらの曲は、あまちゃんがなければ申し訳ないがヒットしてないだろう。しかし、あまちゃんを知るものには、あのメロディーは黄金の旋律に聴こえる。
ドラマのシーンにもあった秋祭りの山車のお通りは、エレクトリックパレードに負けない。
それまで無名だった主人公あきちゃんこと能年玲奈は、ミッキーマウスにも勝る国民的アイドルになった。
もともとすばらしい場所や人だから社会現象になるまでになったわけだが、あまちゃんを通じてみんなにそれを伝え、そこに新しい価値を与えた。
U23の仕事とは、まさにこういう仕事だ。U23を通じて、まだみんなが知らない世界を伝え、普通の世界に新しい価値を創造し、23倍ハッピーな未来に変えたい。