未来を変えるデスク~U23 Desk History

イランの旅していたある日、ネット規制を回避するためVPNでつないだfacebookに大阪からメッセージが届く。6年前にU23バンクーバーを立ち上げたときの元トレーニーから、パートナーと仕事場を紹介するメディアを立ち上げるから取材したいとの依頼だった。U23で学んだことが役に立ち挑戦をしているというのも嬉しいし、魅力的なデスクを考えたときに真っ先にU23が思い浮かんだと言うのも嬉しい。かわいい教え子の頼みならと、その場でOKして帰国後に時間を調整する。その”デスクメディア”は、『Craen(カレン)』といい、「オフィス」ではなく「デスク」という仕事場を紹介している。個人のプラットフォームを支援したいと言う。未来の生き方・働き方を応援するU23のヴィジョンとも重なる部分がある。

この機会に、もう一度、仕事場の机、デスクについて考えてみた。U23は、Future Work《未来の働き方》を探求しており、2003年の創立時からデスクやワークスペースには強いこだわりがある。タイムマシーンに乗ってU23のデスクの歴史を巡る旅に出よう。当時は一部の人にしか分かってもらえなかったけど、今なら時代に先駆けたシステムやスタイルだったとことがわかるだろう。

2003年:シェアハウスのテーブル

Appleはガレージから、Facebookは学生寮から、U23はシェアハウスから誕生した。

U23創業時代は、Kenが留学中にトロントの「シェアハウスのダイニングテーブル」、「カフェのテーブル」、「図書館や学校の机」、「ホステルのテーブル」。この頃から、Future Work《未来の働き方》の原点となる、「iBook G4(Appleのラップトップ)」と「初代iPod」で当時はまだ珍しい「ノマドワーク」をしていた。

時代背景

当時は日本でカメラ付き携帯が普及した頃。2003年に「iTunes Music Store」がアメリカで音楽配信を開始。日本に「Apple Store銀座」オープン。「Mac OS X 10.3 Panther」。「facebook(2004創業)」、「Youtube(2005創業)」、「Twitter(2007創業)」はまだ生まれていない。

2003年:シェアオフィスのカウンセリングデスク

Torontoの中心Yorkvilleでパートナーと「シェアオフィス」をはじめ、U23デスクが誕生する。ノマドワークも続けながら、シェアオフィスで「カウンセリングデスク」をワークデスクと兼用する。3ヶ月後に「M&A」してU23専用オフィスとなる。スタッフや生徒数が増えた3年後には、物置をスタッフルームに改造してオフィススペースを増床する。社内コミュニケーションツールは2002年にはじめてリリースされた「iChat」。対応できる社外の生徒やパートナーとは「Skype」。*写真はリニューアル後

2005年:SOHOのワークデスク

U23日本進出、神戸にて「SOHO(住居兼事務所)」スタイルのU23 Kobeオープン。神戸時代は、1人しかいないオフィスに何台もMacが並ぶU23史上もっともヘビーなワークステーションだった。まだ組織も仕組みもできてないから、営業も企画も生産も経理も人事も総務もシステムもデザインも、一人で何役もマルチタスクでこなすためにMacやデスクが増えていった。アメリカのハーマンミラー社の「ワークチェア」に座ればそこはコクピット。3方向を「ワークデスク」に囲まれた。メインマシンは「Power Mac G5」にスケルトンの「Apple Cinema Cinema Display 23 inch」と「Apple Cinema Display 20 inch」で当時最新鋭の「デュアルディスプレイ」を導入しWebデザインをする。つぎにサブマシンは「iMac G4」に「iSight(ウェブカメラ)」をつなげ、複数ビデオチャットに対応した「iChat AV」でトロントとつなげる。メインマシンが、処理待ちの間に別の作業をする。そして「Mac mini G4」で、ファイルサーバー、プリンタサーバー、ミュージックサーバーなどを構築する。出張時用の「PowerBook G4」もあった。こんな環境でトロントのスタッフと毎日オンラインで話しながら、Future Work《未来の働き方》のコアとなる「リモートワーク」を確立していった。SOHOのため、キッチンで料理を作り食事を囲み、シャワーを浴びてベッドルームで昼寝も宿泊したりできた。後の、東京・バンクーバーでも導入される。レギュラースタッフには「iBook G4」を、トロントオフィスはデスクよりスタッフの数が多くなった時から「フリーアドレス」を導入、このあとすべてのU23オフィスで導入される。

2008年:デザイナーズSOHOのキャスター付きデスク

U23 Japanは神戸から東京・お茶ノ水へ本社を移転し、カウンセリングやセミナーもできるU23 Tokyoオープン。神戸から引き継いだ「Power Mac G5」に「Apple Chinema Cinema Display 23 inch」と「Apple Cinema Display 20 inch」をつなげて「デュアルディスプレイ」。全レギュラースタッフに、「MacBook」。イタリアKartell社の移動できる「ワークデススク」とドイツVitra社の「ワークチェア」を揃える。ゲストは、Euro SarinenのチューリップチェアやPantonのチェアと言った洗練されたデザイナーズ家具で迎えた。「引き出しを廃止」し「移動できる机」にすることで、目的に応じて「ワークスペース」から「イベントスペース」まで変幻自在にレイアウトを変更できる「マルチスペース」にした。ここで暮らしている人もいるマンションだから「キッチン・シャワー・ベッドルーム完備」。

時代背景

2007年に、アメリカ合衆国でスティーブ・ジョブズが電話の再発明、「初代iPhone」を発表。日本での発売は2世代目からで「iPhone 3G」がリリースされた2008年。2010年には、魔法のタブレット「初代iPad」が発表される。2011年には「iCloud」を発表。

2010年:SOHOの未来オフィスの完成形

2010年には、同じビルの「ペントハウス」へ移動し、「DIY」で最新テクノロジーとクリエイティビティを導入したSOHOスタイルの近未来ワークスペースとして一つの完成形に達する。Epson社の「150 inchのスクリーン・無線3Dプロジェクタ」とScandyna社の「5.1chスピーカー」で映像・音響環境を整え、30人以上のイベントも可能にした。150 inchのデュアルディスプレイとも言えるMacの画面を写しプレゼンテーションをしたり、ビデオチャットをつなげるとトロントのオフィスが隣にあるかのように等身大で映し出すこともできた。世界中の都市間をつなぎ乾杯する「オンラインパーティー」は名物になった。「撮影スタジオ」としてアーティストのジャケット写真に使われたり、「クラスルーム」としてスタディグループやワークショップを開いたり、「シアター」として映画やスポーツ観戦したり、時にはホームスターで星を映し出す「プラネタリウム」になり、アイデア次第でなんでもできた。Kartelの「ワイドデスク」と、アルミニウムの「Apple Chinema HD Display 30 inch」環境を7席。新人も役員も同じ環境のフリーアドレスで、東京最高峰の新人のワークスペースとも言われた。一部ではトリプルディスプレイ、高性能マイクやカメラの動画配信環境も整備した。もちろん、キッチン・シャワー・ベッドルーム完備。後にこの環境を社外にも共有し、「コワークスペース」や「レンタルスペース」も始めた。「Mac mini」と「Mac OS X Server」で「自社サーバー」を立ち上げ、「クラウド」で情報を共有する。Future Work《未来の働き方》はApple Storeや書籍でも紹介された。

2011年:シェアオフィスのデスク

インターンシップのプロジェクトで、バンクーバーのガスタウンにU23 Vancouverをオープン。東京は居住用として想定されたマンションの一室をワークスペースにDIYでセルフリノベーションしたが、バンクーバーは西海岸らしく地元のクリエイターやエンジニアが暮らしながら働く「Live&Work」に最適化されたスタジオだった。入居者が共有で使える「ミーティングルーム」や「トレーニングルーム」、「レクレーションスペース」がある。いつものワイドデスクとデュアルディスプレイとレンガのビルに似合うインテリアをコーディネートをするだけでよかった。30 inchのデュアルディスプレイを備え一人の作業に集中できるフリーアドレスのワークデスク、誰かと相談したりプレゼンテーションや食事もできるミーティングテーブル、青空の下で太陽の光と浜風を浴びリフレッシュしながら作業や打ち合わせのできるルーフトップのテーブルと、シチュエーションに応じて働く場所を選べた。後に、コストダウンと新しい挑戦のため、バンクーバーのベンチャー企業を迎え、シェアオフィスへと変化した。2003年にはデスクを借りるスタイルでシェアオフィスをしたが、今度はU23がデスクを貸し出す立場となった。渡航費用も滞在費用もすべてU23が提供しバンクーバーでチャレンジしたいスタッフを募るオーディションも試みた。ヨーロッパにもスタッフが増えサテライトデスクができ、太陽を追いかけるように時差に合わせてオフィスが開く「フォローザサン」のシステムも生まれた。東北大震災の時も、関東・東北のほとんどの企業が臨時休業する中で、翌日から通常営業に加え震災支援を始めていた。

2014年:レンタルオフィスのデスク

U23 Tokyoをお茶ノ水のデザイナーズSOHOから代々木ヴィレッジの「レンタルオフィス」へ移転。小林武史など日本を代表するクリエイターがこだわりを追求し尽くした環境で刺激的なワークスタイルを発信するというコンセプトでオープンするそのレンタルオフィスに、数十社の応募の中から実質3枠の1つを手に入れた。もっとスピードをあげてエキサイティングなチャレンジをするために、U23創立10年目を節目にいろいろ見直し、これまで大きくしてきたチームを最速のスピードを実現するミニマム化の方向へ舵を切る。引っ越しはコストダウンも大きな理由であるが、オフィスが変われば新しい何かが生まれる期待も含まれていた。制限があったからこそ、Future Work《未来の働き方》は生まれた。例えば、オフィスがないからノマドワークが生まれ、同じ時間と場所にスタッフがいないからリモートワークが生まれた。紙を廃止することでクラウドでデータを共有するようになり、固定デスクを廃止することでフリーアドレスで働き、電話も廃止することで仕事に集中できるようになった。スマートフォンが普及しいつでもどこでも働くことができるようになり、対外的なことを除けば固定オフィスは必要なくなりつつあった。次の未来が見え始めていた。

2015年:コワークスペースのデスク

トロントのコンドミニアム建設ラッシュで創業期からいたトロントのオフィスを引っ越しせざるを得なくなる。この機会に固定オフィスの廃止も検討したが、レンタルオフィスに引っ越しをして段階的にミニマム化を進める。バンクーバーのオフィスも最小限のデスクだけのシェアオフィスに引っ越しする。マーケットの拡大と新プロジェクトのベースキャンプとして、コストパフォーマンスの優れた大阪に拠点を移す。しばらくの間、「コワークスペース」で固定オフィスなしの実験をする。次に、いつでも撤退できるレンタルオフィスを大阪・梅田にみつけU23 Osakaを開設。フリーアドレスのワイドデスクとデュアルディスプレイと言うデスク周りは2008年から変わらない。ただ、オフィスの外、iPhoneやiPadで働く時間が何倍も増えてきた。

2016年:ホームステイ施設併設ホームオフィスのデスク

未来の生き方・働き方を学ぶホームステイ施設を併設した5階建の「異文化交流滞在可能型オフィス」を大阪にオープン。U23史上初の自社ビル?!で、オフィススペースはU23史上最小。滞在施設を備え、外国人旅行者や日本人の学生や社会人が、出張、遠征、合宿などに利用できる。DroneやVRも飛び交うここからFuture Life/Work《未来の生き方・働き方》を発信する。そして、U23トロント・バンクーバー・東京・大阪を独立、各地で元スタッフにより新会社創立。U23オフィスは、順次クローズ。現地サポートデスクは、提携パートナーにアウトソーシングする。

2017年:オフィスレスでノーデスク常に未来起点。デスク一つで”ヒト”と”アイデア”をつなぐ。

いよいよオフィスは一つとなった。オフィスの外でも「iPhone」と「AirPods」でワイアレス環境で音楽を聴きながら、「AppleWatch」でハンズフリー環境で「MacBook Pro」のロックを解除し、オフィスの外でも「MacBook Pro」と「iPad Pro」で「デュアルディスプレイ」。最後のオフィスも時代が追いつくまでの対外的な理由が主で、機能的にはなくてもそれほど問題ない。もはや「バーチャルオフィス」で十分。いつでもどこでも働けるから、謂わゆる店舗や事務所としての営業日も営業時間もなくなった。誰使わない日もある。オンラインではロボットが365日24時間年中無休で働いている。アウトソーシングしたパートナーやクラウドワーカーもいる。人が必要な時も特別な場合を除き重要な連絡があれば世界中どこにいてもほぼ23時間以内に返事している。費用さえ負担してもらえれば世界中のどこへでも呼ばれた場所へ2、3日以内にほぼ行ける。デザインの仕事はMacでするからデスクが必要だけど、それ以外の仕事はだいたいiPhoneとiPadで可能になり、極端な話をすると立ってでも電車で移動しながらでもできる。船に乗って海からでも飛行機に乗って空からでもできる。「ノーデスク」「デスクレス」と言うワークスペース。

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Carenに掲載された記事:常に未来起点。デスク一つで”ヒト”と”アイデア”をつなぐ。 >