未来を変える教え方〜23の指導術
教育は未来を変える。家庭教師、学習アドバイザー、教育コンサルタント、留学カウンセラー、セミナー講師、マネージャー、経営者の経験をもとに、教育のプロとして得た知識、未来を変える指導方法を共有する。
最適な教育は、だれに、なにを、どこで、どのように、いつ、いつまでに教えるかによって違う。生徒をよく観察し心の声を聞き、これから紹介する23のTipsを臨機応変に使ってほしい。人材育成・社員教育の鍵は、指導者の愛と情熱にかかっているといっても過言ではない。
最初からできる人なんていない。だから育てる。そのために自分がいる。
目次
- 心に火をつける
- 学ぶ悦びを目覚めさせる
- 夢を説く
- やることを伝える
- やってはいけないことを教える
- まずやらせる
- お手本を見せる
- 理由を添える
- もう一度やらせる
- 全体像を把握させる
- 繰り返す
- 焦点をあてる
- 細分化する
- たとえ話を使う
- 具体的に教える
- 簡単な言葉で話す
- 質問をする
- 五感を研ぎすます
- メモをする
- ユーモアを使う
- フィードバックする
- 自信を与える
- 教えさせる
心髄の章
1. 心に火をつける
The mediocre teacher tells. The good teacher explains. The superior teacher demonstrates. The great teacher inspires.
-William A. Ward平凡な教師は言って聞かせる。 よい教師は説明する。 優秀な教師はやってみせる。 偉大な教師は心に火をつける。
-ウィリアム・A・ワード
どんなに説明が上手い先生でも、学ぶことを放棄した生徒には教えられない。
やる気さえあれば、たいていのことはできるようになる。
2. 学ぶ悦びを目覚めさせる
It is the supreme art of the teacher to awaken joy in creative expression and knowledge.
-Albert Einstein独創的な表現と知識の悦びを目覚めさせることが教師の究極の術である。
-アルベルト・アインシュタイン
気が進まないのに6年以上も学校の授業を受けさせれてほとんど英語がわからなかった人が、英語を話したり英語が読める悦びに目覚めたとたん1年で劇的に英語ができるようになる。好きになって夢中になるともっと知りたくなる。
3. 夢を説く
If you want to build a ship, don’t drum up the people to collect wood and don’t assign them tasks and work, but rather teach them to long for the endless immensity of the sea. -Antoine de Saint-Exupéry
船を造りたければ、人々に木を集めてくるように促したり、作業や任務を割り振るのではなく、果てし無く続く広大な海を慕うことを教えよ。 -アントワーヌ・ド・サン=テグジュペリ
星の王子さまの著者の言葉。いったん志を抱けば、あらゆる方法でその夢を叶えようとする。勇気を持って決断し行動するようになり、自分でも驚く力を発揮する。夢やミッションを共有しよう。
実践編
4. やることを伝える
やり方ではなくやること、ゴールを教える。
思いがけないやり方が見つかるかもしれない。
例: イベントの参加者を100人集めるという仕事を教えるとき、自由にやらせてみる。今までは、プログラミングもデザインもライティングもプロのベテランスタッフが、1週間かけて告知ページ・応募フォーム・案内文を作りメーリングリストで50人を集めていた仕事を、素人の新人スタッフが、1日でFacebookでイベントページを作成して100人集めるかもしれない。
5. やってはいけないことを教える
注意事項を知ることで自由に動ける。
制限がある方が革新を生みだしやすかったりもする。
例:「Macはあなたの自由に使っていいです。」
と言われても本当に何をしてもいいのか不安が残る。
「ライブラリフォルダだけはシステムに不具合を起こす危険があるので今は触らないように。それ以外はすべて自由に触って大丈夫です。」と言われると、重要なことは教えてくれていると安心する。
6. まずやらせる
何かを学ぶためには、自分で体験する以上にいい方法はない。
他人から何回も説明されるより実際に自分の目で見た方がよくわかる。
例: iPadに触れたこともない人に何回も説明をするより、一回でも実際に触らせた方が伝わる。その後に解説を聞くと理解しやすい。
7. お手本を見せる
お手本を示すのは人を動かす最適な手段。
最初に通しでやってみせ、次は一つずつの動作を確認しながら実況解説を加える。
例:生徒さんが到着して空港の入国ゲートから出てきた時に一番目に入りやすい位置で待機します。いっせいに何人も出てくるので見落とさないように注意しましょう。生徒さんらしき人が出てくると、ウェルカムボードを頭の上に掲げて笑顔で視線を送ります。そして、生徒さんが気づいたらすみやかにそのあたりの空いているスペースへ誘導します。
8. 理由を添える
教えるときは必ずなぜそうするのか理由を伝える。
頭ごなしに覚えなさいではなく、意味があると記憶に残りやすい。
NG: 「とにかくショートカットキーを覚えなさい。」
と言われても納得しにくい。
Good: 「コピー&ペーストするときをショートカットキーを使うと仕事が楽になります。
ショートカットキーを知らない人は、
1. マウスでカーソルを動かす
2. メニューバーの編集をクリックする
3. コピーをクリックする
4. テキストを挿入したいところまでマウスでカーソルを移動する
5. メニューバーの編集をクリック
6. ペーストをクリック
とこれから教えるショートカットキーを使った場合の倍以上のステップで、3倍以上の時間がかかります。
ショートカットキーを知っている人は
1.「Command + C」でコピー
2.「Command + 矢印」で移動
3. 「Command + V」でペースト
とマウスを使うわず一瞬でできます。
覚え方は
Commandは、命令を呼び出すキーと覚えます。
CはCopy。
VはPaste。CはCopyで使われているので、Cの右隣のV。
Vの形から糊のチューブの先をイメージすると覚えやすい。
ちなみに、Cutは「Command + X」 CはCopyで使われているので、Cの左隣のX。
Xの形からはさみをイメージすると覚えやすい。
隣同士のX (Cut), C (Copy), V (Paste) をセットで覚えましょう。」
ショートカットキーを覚えたら仕事が楽になるので覚えたくなる。 アルファベットに意味があると覚えやすい。
9. もう一度やらせる
まだ無理と思ってもやらせてみる。
失敗しても「次はできるはず」と声をかけることが大切。
失敗から学ばせる。
NG: 前回できなかったから、上司は、こと細かく口を出し、何から何までお膳立てした。しかしこれでは成功しても上司のおかげ。自分の頭で考えたり判断できなくなる。失敗したらここまで世話を焼いてもらってもできないのかと自信を無くす。自分でやれることや、すべきことを助けるのは、本人のためにならない。自立を妨げてしまう。
Good: 前回できなかったけど、次はできるとやらせてみる。助けたくなっても本人が気づくまで我慢して見届ける。過保護に助けて失敗を間逃れると、成長する機会を奪ってしまうことになる。反省してないからまた同じ失敗を繰り返す。それより、転んでも起き上がることを教える。成功しても失敗しても経験から学び、自立できるようになる。
説明編
10. 全体像を把握させる
ものごとを正しく見るためには、全体をみること。 その仕事は全体のどういう部分で、どこにつながるのか、自分はどういうポジションを担うのかを教える。
例: Skypeのマニュアルを作る場合、Skypeガイドページを作成するプロジェクトの概要を説明し、依頼したマニュアルを元に、ライターが留学生向けに書き直し、Webデザイナーにより一般公開される、、、のようにどの部分を担当するのか伝える。いつ、どこで、だれが、なんのために、どのように、どれぐらい使うのかをわかっていなければ適切な資料は作れない。
11. 繰り返す
同じことを繰り返していると、そのうち当たり前にできるようになる。 覚えるまで一つのことを徹底的に繰り返す。一つ覚えたら次へ、それを覚えたらまた次へ、そしてそれをまた繰り返す。
例: タイピングは繰り返し練習することで習得できる。
12. 焦点をあてる
あれもこれも一度に教えても頭に入らない。一つずつ焦点をあてて教える。
大切な事がいくつもある中で優先順位を伝える。
NG: 行動指針を伝えます。1. Speed スピードに命をかける。 2. Spirit 魂を込める。 3. Simple シンプルを極める。 4. Smart 考えてかしこく動く。 5. System システム化する。 6. Safety 安全第一。 7. Smile みんな笑顔。 以上。
Good:「行動指針を伝えます。 7つあり今日はその中で最も大切な”Speed”を覚えよう。 このチームは”Speed”に命をかけています。 ”今までの23倍”のスピードで挑戦と失敗をして未来を変える革新を起こす。 失敗しても”すぐに”起き上がるのがSpirts。 もっとSimpleにできることに気づいたら”即”実行。 Smartなアイデアを思いついたら”直ち”に改善。 Systemは”迅速に”アップデート。 Saftyのためには”早期に”問題を発見して”大至急”修正。 笑顔を忘れていたら”瞬時に”Smile。 もし失敗しないなら、最高の”Speed”ではないかもしれません。」
すぐに、即、直ちにと焦点が一つでSpeedはこれで覚える。
13. 細分化する
小さい仕事に分ければ、それほど難しくはない。
真似できないのは細かい動きがわからないからで、一連の仕事の動作を細かく分解する。
例: ショートカットキー「Shift + Command + 4」でウィンドウのスクリーンショットを撮るを細分化すると、
1. 画面のカーソルを見る。
2. 左手の小指でShiftキー を押さえる。
3. 左手の親指でCommandキーを押さえる。
*1と2は可能な限り同時に、1と2が前後してもよい。
4. 左手の中指で4を押さえる。
5. それらの左手の親指、中指、小指を浮かせてキーボードから離す。
6. 矢印のカーソルがカメラマークに変化したのを目で確認する。
7. 右手の人差し指をトラックパッドに近づける。
8. その右手の指をトラックパッドにタッチする。
9. その右手指をトラックパッド上で動かしカメラマークのカーソルを撮影したいウィンドウの上まで動かす。
10. 左手の親指でスペースを押さえる。
11. 左手の親指でスペースから離す。
12. ウィンドウが選択され水色に変わるのを見る。
13. 右手の人差し指でトラックパッドをタッチする。
この一連の動作を1秒で行う。 一つ一つの動作が見えると、あとは練習あるのみ。
14. たとえ話を使う
わかりにくいことは、たとえ話を使うと想像しやすい。
記憶に残すため相手の関心をひきそうなことや自分が得意な分野でたとえる。
例: コンピュータ用語を人に例えるなら、
OSは、人間の体。Windows語を話す人やMac語を話す人がいる。
CPUは、頭脳。IQが高いと本を読むのも速い。考え過ぎて暴走したり、フリーズすることもある。
アプリケーションは、おもちゃ。絵本、積み木、折り紙、風船、楽器、ラジコンなどいろいろある。
メモリは部屋の広さ。RAMが大きければ、絵本を開いたまま楽器を叩ける。散らかしすぎると遊ぶスペースがなくって壊れることもある。
ハードディスクは、おもちゃ箱。HDDの容量が大きいほど、おもちゃと折り紙で作った飛行機や膨らませて大きくなった風船をいっっぱいしまえる。新型のSDDというおもちゃ箱はちょっと小さいけどめちゃくちゃ早くしまえる。
インターネットで、部屋の外に出ると未知の世界が待っている。ウィルスに感染して病気にならないように気をつけよう。」
例: 「サッカーで例えると、シュートを打たないとゴールは入らない。だから失敗を恐れず挑戦するんだ。」
15. 具体的に教える
具体的であればあるほど理解できる。行動にもつながる。
曖昧な表現は受け手によって解釈が変わる。
NG:なんか違うんですよね。言いたいことがよくわからないから、もっとわかりやすくしてください。あまり読みやすいとも言えないので、校正や表現を工夫してください。あと、いろいろなことを詰めず、もうちょっと短くしてください。なるべく早く再提出するようにお願いします。
「なんか」「もっと」「あまり」「いろいろ」「もうちょっと」「なるべく」という抽象表現を使わない。
Good:伝えたいことがわかりづらいので、結論を最初に書き、事例を1つに絞ってください。文章が読み辛いので、一文を100字以内に短くし、段落を増やしましょう。専門用語を小学生でも知っている簡単な言葉に置き換えるように。1000字以内で書き直し、4/23までに再提出してください。
具体的でわかりやすい。
16. 簡単な言葉で話す
子供でもわかるように説明する。
専門用語は知らない人にとって違う言語のようなもので何を言っているのか意味がわからない。
イメージしやすい表現や単位に言い換える。
NG:Unlocked iPhone 5Sに4G LTE回線に対応したキャリアのnano SIMを挿してテザリングすれば、100Mbspの通信速度でMacをネットに接続できます。
Good:どこの通信会社でも使えるiPhoneがあります。そのiPhoneに新しいすごく速いインターネット会社のチップをセットします。そしてiPhoneの電波をMacで受信する技を使えば、昔は1分かかっていた写真を1秒でダウンロードできる高速インターネットをMacで使えます。
習得編
17. 質問をする
自分で考える習慣をつけるように訓練する。 どういう考え方をするのか、どこまで理解しているかを判断する指針にもなる。
例: 「U23 Commitmentについて、google docにレポートを書き、トレーナーへ、4/23までに提出。」という課題を教える場合、
なぜ、U23 Commitmentなのか? なぜ、レポートを書くのか? なぜ、google docを使うのか? を質問する。
18. 五感を研ぎすます
目で見て、手を動かし、口で話し、耳で聞いて、鼻で匂って覚えさせる。 マニュアルの文字を目で追って覚えようとすると視覚しか使っていない。 五感を総動員すれば、一回の動作で5倍の学習力。考えるのではなく感じる。
例:U23 Commitmentの「Smart」を記憶したいとき、頭の中でSmartに働く場面をイメージし、「Smart」と声をだしながらタイプする。その声を聞き、入力される文字を見て、オフィスの香りとともに記憶する。
19. メモをする
メモを取ることで記憶に残り、ノートを見直したりまとめることで記憶が定着し、忘れかけた時には記憶を呼び起こす助けとなる。ただし、メモをとることが目的になってはいけない。大切な言葉は心のノートに刻む。
例:勉強会でサーバーが停止した時の注意事項をEvernoteにメモをして、翌日Google Driveでチェックリストにまとめた。
サーバーの構築が何回やってもうまくいかず諦めかけた時、 「失敗とは転ぶことではなく、転んだまま起き上がらないこと。」 という入社式で先輩に言われた言葉を思い出した。
20. ユーモアを使う
ユーモアのない指導はおもしろくない。どんなときも笑いを忘れないようにしよう。 ウィットに富んだユーモアは学習を楽しくする。
例:スペイン語には男性名詞と女性名詞があるけどコンピュータはどちらでしょう?
スペインと中南米で違います。
スペインでは、un/el ordenador。 先進国は、新しい角張ったアルミニウムの大きなiMac、データ容量は半端ないくせに、指示がないと動くことができない男性名詞と覚えましょう。
中南米では、una/la computadora 後進国は、昔の丸みがありかわいく小さなiMac、急に怒って暴走したりフリーズする、女性名詞と覚えましょう。
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間違いに気づいたらすぐに注意する。嫌われないために間違いを見過ごすと状況を悪化させる。 上手くできたら褒める、間違ったら叱る、転んでも起き上がったら褒める。
NG:注意して嫌われるのも面倒なので見逃していたら、前回と同じメッセージの伝わらない広告で案内をしたため反応が悪く販促キャンペーンに失敗した。
Good:過去に失敗した販促キャンペーンを再度練り直して試したけど今度も結果が出なかった。「本気で挑戦した失敗には意味がある。あきらめずもう一度挑戦したのはすばらしい。キャンペーンのメリットは前回より断然伝わりやすくなった。ただ、それ知らなければ誰も申し込みめないから、告知方法を検証しどうすればアクセスされるか検証してみよう。」と修正点をはっきりと指摘し、よかった点を褒める。
22. 自信を与える
自信を持たせることが重要な。自信さえあれば人は行動を起こす。 期待されると大きな結果を生む。自分に期待することで物事は可能となる。 教える側も教えられる側も「できる」と唱え続ける。
NG:お前には無理だと言われ、どうせ自分には無理だと自信がなくなった。準備も身が入らず、やる前から失敗のイメージで、不安と恐怖の状態でプレゼンテーションは失敗した。
Good:あなたならできると期待され、自分にもできそうと自信が湧いてきた。期待に答えるため必死に準備をして成功イメージを描き、失敗を恐れず堂々とプレゼンテーションを成功させた。
23. 教えさせる
教えることで、もう一度学ぶ。 アインシュタインも言うように、子供にもわかるように説明できるようになってはじめて理解したと言える。
例:まだ入社して研修を受けている身だけど、自分が学んだことを人に教えることで、改めて勉強し直して電話対応がうまくなった。教える立場から電話応対を注意深く聞いていると、自分も注意すべき発見があった。