タイランドから新入社員を迎える教育者へ問うー1年前、1年後

Koh Phangan

前回は新入社員へ向けて「スリランカから2015年度新入社員へ捧ぐー10年前、10年後。」という手紙を書いた。今回は、新入社員を迎える先輩社員へメッセージを届ける。

と言っても、教え方の極意は以前にまとめたので、「未来を変える教え方〜23の指導術」を読んでほしい。「物事の見方」を読み、指導者が見ている世界と新入社員が見ている世界の違いも再度確認しよう。今回は、日本の中小企業の新入社員へ指導をテーマにこれらを補足する。

多くの中小企業にとって、大企業のように採用コストも教育コストもかけられない。淘汰することを前提に大量採用することもできなければ、戦力になるまで長期間腰を据えて研修をする時間も豪華な研修する場所も余裕はない。社運を賭けて採用した数人、時にはたった一人の新入社員であることも知らず、彼・彼女たちに社長や先輩社員が見ている世界が見えるわけがなく、大手企業と比べて不満や愚痴をこぼす。

だからと言って、ここで社長や先輩社員が「うちのゆとり新入社員は使えない。」と不満や愚痴をこぼしても未来は変わらない。そもそも中小企業に即戦力の優秀な社員が採用できることの方が稀だ。だから、育てるしかない。先輩社員も会社もいっしょに育つしかない。もしくは、ごく稀にいる天才が誰でも働けるシステムを作ること。二流の会社が、二流の社員を雇い、二流の育て方をしていたら、いつまでも二流から抜け出せない。

世間の評価は三流の会社でもかまわない。三流の社員を採用したと言われてもいい。ただし、三流でも愛と魂を込めて育てよう。そうすれば、その新入社員はいずれ会社を救ってくれるだろう。世界を敵に回しても守りたい社員になる。その会社は新入社員にとって他の誰になんと言われようが絶対に守りたい会社になる。そんな会社を超えた家族のような関係になれたら、地位や名誉やお金だけではない、もっと次元を超えた幸せな未来が待っている。

社運を賭けて採用したのなら、その覚悟を先に行動で示すのは会社だ。部下のミスは上司が責任を持つぐらいの決意をしよう。中小企業の現実を受け入れ、その制限の中で大手企業にはできない、中小企業だからこそできることを見つけよう。お互いに隣の芝生が青く見えるのではなく、中小企業の荒れ果てた荒野には草一本すらないぐらいに思っておくとちょうどいい。荒野に中途半端に人口芝生を植えて見栄を張ってもむなしくなるだけ。ビニールハウス育ちのエリートには味わえない、荒野の自由なワイルドライフのおもしろさを教えてやればいい。

大企業のように、新入社員もめったにお目にかかれない世間のスポットライトが当たる優秀な経営者や社員ではなくとも、優秀ではない社長と社員で肩を並べて飲んで、こんな悩みを抱えながらも必死にもがいて奮闘しているんだと、新入社員の心に火をつけよう。大企業のようにジムやプール完備の豪華絢爛なオフィスは用意できなくても、最高のコンピュータとワークデスクとテキストぐらいは、役員報酬を削ってでも用意して学ぶ環境を整えてやろう。大企業のように雑誌に載るような社員食堂はなくても、先輩スタッフが毎日当番で手作りのお弁当を作って新人と囲んで夢を語ろう。

中小企業が、新入社員に抱える悩みは、突き詰めていくと、ほとんどテクニカルなことではなくマインドが原因である。『未来を変える教え方〜23の指導術』神髄の章 1. 心に火をつける 2. 学ぶ悦びを目覚めさせる 3. 夢を説く この3つを特に最初は心がけてほしい。この3つを早い段階で徹底的に教えることが遠回りのようで近道になる。

マウスイヤーの現代社会では、1年前のシステムと新入社員のシステムは変わっていることも多いが、社風や文化みたいなものは長年かけて築かれるものでそう簡単には変わらない。ということは、同じ組織で働くなら、先輩が経験した仕事のおもしろさや悩みは、後輩も似たような道を通る可能性は高い。特に直近1年前と比べて指導者自身が成長したことを振り返って心の変化を検証すると、指導のヒントもみつかりやすい。どんなことがきっかけで心に火がついたか。どうして学ぶのがたのしくなったのか。あなたの上司はいつ、どこで、どんな夢を説いてくれたか。タイムマシーンに乗って記憶の扉を開いてみよう。それは先輩自身にとっても足跡を確認することで変化を加速させるヒントがみつかるだろう。

教えることは教えられる部下の成長だけでなく、教える上司の成長にもつながる。すなわち、それはチームの成長につながる。新入社員に全社員が愛を注ぎ魂を込めて教えることで、Share The Happinessは広がる。1年後、いまはまだ頼りない新入社員がたくましい先輩になり、まだ見ぬ新人に愛と魂を込めて指導できるどうかは、先輩社員にかかっている。

1年前、あなたはどこにいましたか?1年後、あなたはどこへいきますか?

Change The Future…

Ken from Thailand